X.高梁川上流域の河川と渓流畔林調査 (2014.5)


6.間伐による植生回復と植林地の問題点等について
   はじめに
   1.間伐後の植生回復(田原山の例)
   2.皮剥ぎ間伐の例(日野上の例)
   3.植林地の現況
   4.自然林の状況
   まとめ


はじめに

 私の子供の頃(1955年頃)の山は、松やクヌギ・ナラ・カシなどの雑木林が中心であり、柴刈り・薪取り・炭焼きや、山菜・茸・アケビ・栗などの恵みを受け、またセミ・クワガタ・カブトムシなどを捕って楽しく遊びました。一方、川は水泳や魚釣り、網・ビン・竹籠などを使っての魚捕り、あるいは石の下や穴に手を入れて魚を捕まえ、夜はカーバイト燈を照らして魚を捕り、娯楽や食料の確保としても大切なものでした。その当時、山は自然の草木が茂り、虫や小動物が居り、多くの恵みを人々に与えてくれていました。また、川は自然の流れで多種類の魚が多量におり、田舎では貴重なタンパク源となっていました。私は子供の頃山川で楽しく遊んだことを、今もはっきりと覚えています。
 しかし、1965年頃以降の拡大造林と、高度経済成長からバブル経済を経て社会基盤が整備されると、山川の状況はすっかり変化してしまいました。すなわち、中山間地の山は杉・桧の広大な植林地となって自然林が消えると、山に棲んでいたセミやクワガタ、蝶・トンボその他の虫や小鳥、兎や獣などが姿を消してしまいました。
 植林地は木の成長に伴って下床の草木が枯れると、降雨時には土砂の流出と突発水や土石流の発生による土砂災害の発生源となり、乾期には渇水して谷や川が水不足を生じます。このためその流域の川は苔や藻・水草が無くなり、川床に泥が沈着するため水生昆虫が減少し、魚の餌が無いため魚も激減しました。
 また、川は両岸をブロックやコンクリートによる護岸壁で挟まれて、川幅の一定した流れとなり、川床は掘削防止のための床止めコンクリートや落差工が入り、水深が一定で瀞や淵もなくなり、魚の棲処も隠れ場所も無い人工の流れに変わってしまいました。このため、洪水が発生すると、水中の生き物や魚は逃げ場所が無くて流されてしまい、以前にいた魚が姿を消して回復しない川がたくさん有ります。また、山間地の川はヨシが茂り、護岸壁で囲まれているため下床に入れず、遊ぶことも出来なくなりました。
 私はこのような山川の現状を憂い、少しでも昔の山川の状況に戻したいと思って、現在放置されている植林地を間伐する事と致しました。そして間伐林が五十年、百年後に杉・桧と雑木が共に茂る立派な混交林として残るように願っております。
 本報告では、まず植林地の間伐による植生回復の状況と皮剥ぎ間伐の例を紹介し、その後、現在の植林地の現況と、自然林の状況について紹介いたします。なお、間伐地には最初ナラ・クヌギ・カシ等のドングリを散布しましたが発芽せず、次に芽を出したドングリを植えましたがこれもうまく育ちませんでした。また赤松や山桃は発育がかなり遅れており、無花果の苗は育たず枯れてしまいました。桧やその落葉はフィトンチットの放出が強くて、他の植物の生育を阻害する作用が強いようです。しかし、3〜4年もすると自然に草木が生えて緑が回復してきました。















































まとめ

私は山間地の河川と山を見て歩き、自然環境が大きく損なわれた原因は、以下の理由によると考えています。

1).農地・市街地・河川などの整備により、降雨を人工水路で排水して池や湿地が消え、水生昆虫・カエル・魚などの産卵、生育場所がなくなった。

2).植林行政により郡部や奥山が広大な杉・桧の単相林となった。このため
 @.山の多くの植物が消えて、虫・鳥・獣の生きる場所がなくなった。
 A.山の腐葉土や土壌を流失し、水源涵養能力の低い礫・岩の多い荒れた国土となった。
 B.山は鉄砲水が発生し、斜面崩壊・土石流などの災害を起こしやすい状態となった。
 C.川は降雨時に泥水が流れ出し、常時は谷や川の水が減り、苔や藻・水草が育たず、虫も魚も居なくなった。

植林は広大な面積を占めているため、山から川・海まで自然環境に対する影響が大きい。
川で魚を釣り、山で兎を追っかけて遊んだ昔の自然を取り戻すため、植林地を自然に近い植生に取り戻すよう頑張りましょう。
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